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新株発行

 

I. 新会社法における増資・減資・会社合併と登記

一新株発行(会社法199条から213条まで)

◆一口メモ(その1)非公開会社・公開会社とは何か?

非公開会社とは、株式の内容として譲渡による株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けている株式会社か否かを基準として、すべての種類の株式について株式譲渡制限がある株式会社のこと。公開会社とは非公開会社以外の株式会社のこと。したがって、一部の種類の株式について株式譲渡制限がある株式会社は公開会社である(会社法2条5号)。なお、公開会社は取締役会を置かなければならない(会社法327条1項)。

1非公開会社の新株発行手続

(1)第三者割当て(既存の株主にその持ち株数に応じて新株を割り当てる方法以外の方法による新株発行)の場合(会社法199条・200条・203条・204条)

a募集事項等の決定方法

原則株主総会の特別決議

例外株主総会の特別決議による委任に基づく場合は、取締役会設置会社は取締役会決議、取締役会設置会社ではない会社の場合は取締役の決定(取締役の過半数の一致)

なお、種類株式発行会社において、発行する新株が譲渡制限株式である場合はその譲渡制限株式の既存の種類株主で構成する種類株主総会の特別決議も、定款でその特別決議を不要とする定めがない限り、必要となる。これは、既存の種類株主の持ち株比率維持の利益を保護するためのものである。

◆一口メモ(その2)募集事項とは何か?

1)発行する新株の種類及び数
2)新株の払込金額又はその算定方法
新株の払込金額は、既存株主の利益を害しないために、公正な価額(時価)でなければならない。
3)現物出資によるときはその旨と出資する財産の内容と価額
4)新株と引換えにする金銭の払い込みまたは現物出資財産の給付の期日またはその期間(この資料において「払込期日」または「払込期間」という)
5)増加する資本金及び資本準備金に関する事項

(会社法199条1項)

◆一口メモ(その3)資本金と資本準備金とは何か?

払い込みまたは給付がなされた財産の額が増加する資本金の額である。しかし、その払い込みまたは給付がなされた財産の額の2分の1を超えない額は資本金として計上しないことができ、その資本金として計上しなかった額は、資本準備金として計上しなければならない(会社法445条)。

b既存株主に対する募集事項の公示は必要ない

既存株主の新株発行差し止め請求の機会を確保するために、払込期日又は払込期間初日の2週間前までに募集事項を公告するか、または株主に通知する必要はない。その結果、募集事項等の決定日(株主総会の特別決議、取締役会決議または取締役の過半数の一致による決定の日)から2週間を置かずに払込期日・払込期間を定めることができる。

c新株の申込み

新株の申込みをしようとする者は、会社から申込事項(新株発行会社の商号・募集事項・出資の履行としての金銭の払い込みの取扱い場所・発行可能株式総数、発行する株式の内容などの会社法施行規則41条で定める事項)の通知を受け、法定事項(新株申込者の氏名又は名称・住所・引き受けようとする新株数)が記載された書面で新株の引受けの申込みをする。

d新株の割当て

会社が、申込者の中から割り当てを受ける者を定め、かつ、その申込者に割り当てる株式の数を定めなければならない。

なお、上記の割当ての決定は、定款で別段の定めがない限り、株主総会の特別決議(取締役会設置会社の場合は取締役会決議)による。

(2)株主割当て(既存の株主にその持ち株数に応じて新株を割り当てること)の場合(会社法202条・204条4項)

a募集事項、既存の株主にその持ち株数に応じて新株を割り当てる権利を与えること及び新株引き受けの申込期日の決定方法

原則株主総会の特別決議

例外定款の定めにより、取締役会設置会社は取締役会決議、取締役会設置会社ではない会社の場合は取締役の決定(取締役の過半数の一致)

なお、会社法の施行日(平成18年5月1日)前から存在した非公開会社は、その定款において、取締役会決議により株主割当ての募集事項等を決定する定めがあるものとみなされる(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第76条3項)

新株の発行が種類株主に損害を及ぼす恐れがある場合には、原則として、種類株主総会の特別決議が必要である(会社法322条1項4号)。しかし、種類株主総会の特別決議を要しないと定款で定めた場合は、種類株主総会の特別決議に代えて、会社は新株発行の20日前までに種類株主に対する株主割当てによる新株発行をする旨の通知又は公告をしなければならない。この通知・公告は株主割当てによる新株発行に反対する種類株主に株式買取請求権の行使の機会を保障・確保するためのものである。

上記の場合は、募集事項等の決定日(株主総会の特別決議、取締役会決議または取締役の過半数の一致による決定の日)から20日を置かずに払込期日や払込期間を定めることができないことになる。

b既存株主に対する募集事項等の通知

既存株主に新株を引き受ける権利を行使する機会を与えるために、申込期日の2週間前までに、募集事項・その株主の割当株式数・申込期日を各株主に通知する必要がある。その結果、募集事項等の決定日(株主総会の特別決議、取締役会決議または取締役の過半数の一致による決定の日)から2週間を置かずに申込期日を定めることができないことになる。

c既存株主に対する募集事項の公示は必要ない。

d新株の申込み

上記(1)のcと同じ(第三者割当ての場合と同じ)。

ただし、申込期日までに申込をしない既存株主は、新株の割当てを受ける権利を失う。

e新株の割当て

申込者は、新株の割り当てを受ける権利を与えられているので、第三者割当ての場合の「会社による割り当てという行為」を待つまでもなく、株式引受人になる。

f基準日の設定(会社法124条)

新株を割当てる株主を特定するために基準日を設定する。その基準日の株主名簿上の株主に新株を割り当てる権利を与えるのである。定款にその基準日に関する定めがないときは、会社は、基準日の2週間前までに、その基準日と基準日における株主名簿上の株主が行使することができる権利の内容を公告しなければならない。

ただし、「基準日の設定は義務付けられておらず、株主の変動の少ない会社では基準日を定めないで手続をおこなうことも可能である。」(松井信憲・商業登記ハンドブック264P)

2公開会社の新株発行手続

 (1)第三者割当て(株主割当て以外の方法による新株発行)の場合(会社法201条)

a募集事項等の決定方法

原則取締役会決議

例外新株の払込金額が新株を引き受ける者に特に有利な金額である場合(以下「有利発行の場合」という)は株主総会の特別決議

なお、種類株式発行会社において、発行する新株が譲渡制限株式である場合はその譲渡制限株式の既存の種類株主で構成する種類株主総会の特別決議も、定款でその特別決議を不要とする定めがない限り、必要となる。これは、既存の種類株主の持ち株比率維持の利益を保護するためのものである。

b既存株主に対する募集事項の公示が必要である。

既存株主の新株発行差し止め請求の機会を確保するために、払込期日又は払込期間初日の2週間前までに募集事項を公告するか、または株主に通知する必要がある。その結果、募集事項等の決定日(取締役会決議の日)から2週間を置かずに払込期日・払込期間を定めることができないことになる。
ただし、有利発行の場合は上記の募集事項の公示は必要ない。

◆一口メモ(その4)新株発行差し止め請求とは何か?

新株発行が効力が生じるまでの期間は、既存の株主に新株発行を差し止める制度。会社が定款・法令に違反し、又は著しく不公正な方法で募集株式を発行し、これにより株主が不利益を受けるおそれがある場合には、株主は会社に対して新株の発行の差止めを請求できる(会社法210条)。

具体例2005年(平成17年)ライブドアによるニッポン放送買収事件の際、ニッポン放送は株買占めに対抗するため、新株を発行してフジテレビにひきうけさせようとした。しかし、結果として、その新株発行は差し止められてしまった。

この事件で問題になったのは正確には新株予約権の発行であった。ニッポン放送の新株予約権の発行は、「フジサンケイグループ経営陣の支配権維持が主たる目的」で著しく不公正な方法であるとされた。

c新株の申込み

上記1の(1)のcと同じ(非公開会社の第三者割当ての場合と同じ)。

d新株の割当て

会社が、申込者の中から割り当てを受ける者を定め、かつ、その申込者に割り当てる株式の数を定めなければならない。

申込人は割当てを受けた株式について株式引受人となる。申込人が多数の場合は誰に割り当ててもよい(割り当て自由の原則)。

なお、上記の割当ての決定は、代表取締役等の業務執行機関が行う。ただし、発行する新株が譲渡制限株式の場合は、上記の割当ての決定は、定款で別段の定めがない限り、取締役会決議による。

(2)株主割当ての場合

募集事項、既存の株主にその持ち株数に応じて新株を割り当てる権利を与えること及び新株引き受けの申込期日の決定方法は、取締役会決議である。その他は、上記1の(2)と同じ(非公開会社の株主割当ての場合と同じ)。

3現物出資と検査役の調査(会社法207条)

現物出資の方法により新株発行をする場合には、現物出資財産の価額を調査させるために、新株発行をする会社は裁判所に検査役の選任の申立をし、かつ選任された検査役の調査を受けなければならない。ただし、下記の場合は、検査役の調査は必要ない。

 1)現物出資する株式引受人に割り当てる株式の総数が新株発行前の発行済株式の総数の10分   の1を超えない場合

 2)現物出資財産の価額の総額が500万円を超えない場合

 3)現物出資財産が市場価格のある有価証券で、その価額が市場価格(会社法施行規則43条で    定める方法により算定されたもの)を超えない場合

 4)現物出資財産の価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法    人、 税理士又は税理士法人の証明を受けた場合(現物出資財産が不動産である場合には、こ  の証明 のほかに不動産鑑定士の鑑定評価を受けることも必要)

 5)現物出資財産が新株発行会社に対する金銭債権(弁済期が到来しているものに限る)であって、 その現物出資財産の価額がその金銭債権についての負債の帳簿価額を超えない場合

4総数引受契約(会社法205条・206条2号)

総数引受契約とは、第三者割当てによる新株発行において、一人または数人がすべての新株を引き受ける契約のことである。この総数引受契約の場合は、募集事項の決定・募集事項の公示(公開会社における有利発行でない場合)などの手続きは必要であるが、新株の申し込みおよび割当ての行為が不要である(会社法205条)。

なお、「新株が譲渡制限株式である場合は、会社法204条2項を類推適用し、定款で別段の定めがない限り株主総会の特別決議(取締役会設置会社は取締役会決議)により、契約の相手方を決定することが望ましい(松井信憲・商業登記ハンドブック282P)」という見解あり。

総数引受契約書の体裁

契約書が1通である必要はないが、実質的に「同一の機会に一体的な契約」で新株の総数の引き受けが行われたと評価しうるものであることが必要である(相澤哲・葉玉匡美・郡谷大輔編著「論点解説新・会社法」208P参照)。

5出資の履行(会社法208条)

新株の引受人は、払込期日または払い込み期間内に払込取扱場所で払込金額の全額を払い込み、現物出資全部の給付をしなければならない。

金銭の払い込みがあったことの証明書の具体例(発起設立の場合と同じ)

 1)銀行等の払込取扱機関の作成した払込金受入証明書(払込金保管証明書

 2)代表取締役等の作成した銀行等の払込取扱機関に払い込まれた金額を証明する書面に登記所届出印(会社実印)を押印したものに、払込取扱機関における口座の預金通帳の写し(表紙と該当頁)又は取引明細表その他の払込取扱機関が作成した書面を合てつしたもの。

6株主となる時期(会社法209条)

出資を履行した新株の引受人は、払込期日を定めた場合は、払込期日に株主なり、そして払込期間を定めた場合は、出資を履行した日に株主になる。

払込期間を定めた場合の変更登記

複数の新株の引受人について出資の履行日が異なるとして異なる日付の変更年月日により数回の変更登記を要するとしては煩雑なので、払込期間の末日現在までの変更分を一括して登記申請して差し支えない。

その場合の登記期間は、払込期間の末日から2週間以内である(会社法915条2項)。

7会社法は、上記の新株発行と自己株式の処分を「募集株式」の発行といい、同じ制度・同じ規律の下に置いた(会社法199条1項参照)。

二資本準備金の資本組入れ(会社法448・449条)

1株主総会の普通決議により次の事項を定めなければならない。

 (1)減少する資本準備金の額

 (2)減少する資本準備金の額の全部又は一部を資本金とすること及び資本金とする額

 (3)資本準備金の額の減少がその効力を生じる日

2会社債権者保護手続

減少する資本準備金の額の全部を資本金とする場合は不要である。しかし、減少する資本準備金の額の一部を資本金とする場合は必要である。会社債権者保護手続については資本金の額の減少の項で説明する。

3資本準備金の資本組入れの効力発生時期

株主総会の普通決議により定めた効力発生日に効力が発生するが、その日に会社債権者保護手続が終了していないときは、同手続が終了した時。

4利益準備金の資本組入れはできない。

5特例有限会社も資本準備金の資本組入れができる。

6その他資本剰余金の資本組入れができる(会社法450条)。

7配当可能利益の資本組入れ(旧商法293条ノ2)はできない。

その他利益剰余金の資本組入れはできない(会社計算規則48条1項2号)。

三資本金の額の減少(会社法447・449条)

原則株主総会の特別決議と債権者保護手続が必要である。

例外

1)定時総会において、欠損の額として会社法施行規則68条で定める方法により算定される額を超えない額を、減少する資本金の額として定める場合は、株主総会の特別決議ではなく普通決議でよい(会社法309条2項9号)。

2)会社が新株の発行と同時に資本金の額を減少する場合においては、合計で資本金の額が変更ないか増加するときは、株主総会の特別決議ではなく、取締役の決定(取締役の過半数の一致)または取締役会設置会社にあっては、取締役会決議で足りる(会社法447条3項)。

1株主総会の特別決議により次の事項を定めなければならない。

 (1)減少する資本金の額

 (2)減少する資本金の額の全部又は一部を準備金とすること及び準備金とする額

 (3)資本金の額の減少がその効力を生じる日

2会社債権者保護手続

(1)会社は、次の事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別にこれを催告しなければならない。

 1)資本金の額の減少の内容
 2)会社の計算書類に関する事項として会社計算規則180条で定めるもの(会社の貸借対照表の   要旨を官報で公告をしているときは、その官報の日付と公告掲載頁など)
 3)債権者が1箇月以上の一定の期間内に異議を述べることができる旨

(2)異議を述べた債権者に対して、会社がすべきことは次のいずれかである。

 1)弁済する。
 2)相当の担保を提供する。
 3)債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託する。

なお、債権者が期間内に異議を述べなかったときは資本金の額の減少について承認したものとみなされる。

3資本金の額の減少の効力発生時期

株主総会の特別決議等により定めた効力発生日に効力が発生するが、その日に会社債権者保護手続が終了していないときは、同手続が終了した時。

◆一口メモ(その5)資本金・準備金の額の減少とは何か?

会社法は、資本金減少・準備金減少を数字(計数)の減少と考えたので「額」の減少と表記=表現した。「商法改正前の実質上の資本減少は会社法のもとでの資本金減少+剰余金配当、株式償却を伴う資本減少は会社法のもとでは資本金減少+自己株式取得等となる。」(神田秀樹・会社法第8版246P)

四会社合併(実務上実例の多い吸収合併を中心に説明する)

1会社合併の意義・意味
「会社の合併とは、2つ以上の会社が契約によって、1つの会社に合体することである。このような1つの会社への合体には、当事会社の1つが存続して他の会社を吸収する場合(吸収合併)と、当事会社がすべて消滅して新しい会社を設立する場合(新設合併)とがあるが、実際には前者のほうがよく利用される。会社法は、いずれの場合にも、合併の結果、一部または全部の会社が解散によって消滅すると構成するため、合併は消滅する会社にとっては解散の一場合である。ただし、合併の場合には、その他の解散の場合と異なり、消滅会社の財産は存続会社または新設会社に承継され、消滅会社の株主は合併手続の中で対価の交付を受けるため、清算手続は不要である。」(神田秀樹・会社法第8版294・295P)

2吸収合併の手続

(1)吸収合併契約の締結(会社法748・749条)

(2)事前の開示(会社法782・794条)

消滅会社・存続会社において、合併契約の内容と法務省令事項(会社施行規則182・191条)を記載した書面又は記録した電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。株主および会社債権者は、会社に対して、その営業時間内は、いつでも上記の書面・記録の閲覧あるいは謄・抄本の交付を請求することができる。

上記の事前開示は株主が吸収合併契約を株主総会で承認するか否かの判断材料になる。そして、会社債権者が合併に異議を述べるか否かの判断材料になる。

(3)吸収合併契約に関する株主総会の承認決議(会社法783・795条)

合併契約で定めた合併の効力発生日の前日までに、消滅会社・存続会社において、原則として株主総会の特別決議による吸収合併契約の承認を受けなければならない。

消滅会社の株主総会の特別決議によるという原則に対する例外

 1)消滅会社の株主総会の特殊決議(会社法309条3項2号)
  議決権を行使できる株主の半数以上であって、その株主の議決権の3分の2以上の多数をもっ   て行わなければならない決議
 2)消滅会社の総株主の同意(会社法783条2項)

なお、反対株主や一定の新株予約権者には公正な価格での買取請求権が認められる(会社法785~788・797・798条)。

(4)債権者保護手続(会社法789・799条)

(5)効力発生日(会社法750条1項)

吸収合併の場合は、合併契約で定めた効力発生日に効力が発生し、新設合併は新設会社の設立登記の日に効力が発生する。

(6)登記(会社法750条2項・921条)

吸収合併については、合併の登記がされるまでの間は、消滅会社は、第三者の善意・悪意を問わず、消滅(会社解散)を対抗することができない。

具体例を挙げて言えば、消滅会社の代表取締役が、合併の効力発生後、合併の登記前に消滅会社所有の不動産を第三者に売買により譲渡した場合の法律関係はどうなるか。

その売買契約は有効であり、合併の登記前においては第三者との関係では法人格の消滅を対抗することができない消滅会社が、合併の登記後においては存続会社が、消滅会社の代表者と取引をした第三者に対して不動産を引き渡すべき義務を負うこととなる(相澤哲・葉玉匡美・郡谷大輔編著「論点解説新・会社法」704P参照)。

(7)事後開示(会社法801条)

存続会社において、合併により消滅会社から承継した権利義務そのたの法務省令事項(会社施行規則200条)を記載した書面又は記録した電磁的記録を合併の効力発生日から6箇月間その本店に備え置かなければならない。株主および会社債権者は、会社に対して、その営業時間内は、いつでも上記の書面・記録の閲覧あるいは謄・抄本の交付を請求することができる。

上記の事後開示は合併無効の訴えを提起するか否かの判断材料の提供の意味もある。

合併無効の訴え(会社法第828条1項7・8号・2項7・8号)

当事会社の株主、取締役、監査役、執行役、清算人、破産管財人、合併を承認しなかった債権者は、合併の効力発生日から6か月の期間に限り、合併無効の訴えを提起できる。総会決議の取消事由に基づくときは決議後3か月の期間に限られる。合併を無効とする判決は第三者にも効力がおよび、また遡及効が否定される。

3略式手続(会社法784・796条1項)

 (1)消滅会社

存続会社が消滅会社の特別支配会社(90%以上の親会社等)である場合には、消滅会社の株主総会決議は不要である。

たとえば、甲会社の議決権ある株式の90%以上を乙会社が単独でまたは乙会社とその完全子会社が共同で保有している場合に、乙会社が甲会社を吸収合併するには、甲会社の株主総会の決議は不要である。

ただし、例外あり(会社法784条1項但し書)。

1)反対株主の株式買取請求権
2)吸収合併差止め請求権

法令・定款に違反する場合または対価が著しく不当である場合

 (2)存続会社

消滅会社が存続会社の特別支配会社である場合には、存続会社の株主総会決議は不要である。
ただし、例外あり(会社法796条1項但し書)。

1)反対株主の株式買取請求権
2)吸収合併差止め請求権

法令・定款に違反する場合または対価が著しく不当である場合

4簡易手続(会社法796条3項)

存続会社においては、合併対価の額(簿価)が存続会社の純資産額の20%(旧商法は5%であった)以下の場合には、株主総会決議は不要である。存続会社にとってインパクトが小さく基礎的変更といえず、株主総会決議を要求する必要はないから。

 例外あり(会社法796条3項但し書)。

1)合併差損が生じる場合ほか

反対株主の株式買取請求権あり(会社法797・798条)

5会社合併に関する補足説明

 (1)株式会社と持分会社(合資会社・合名会社・合同会社)間の合併は可能か?

 合併についてはすべての会社間での合併が認められる。なお、吸収合併では、株式会社・持分会 社どちらも存続会社となることができ、新設合併でも、株式会社・持分会社のどちらも新設会社と することができる(神田秀樹・会社法第8版287P)。

 (2)会社合併の効果

合併により存続会社の新株が発行されるのが通常である。そして、合併の対価として、消滅会社の株主は持株数に応じて存続会社の株式の交付を受け、存続会社の株主になる。消滅会社の株主が対価として株式の交付を受ける場合、それまで有していた消滅会社の株式と同じ価値のものでなければならない。しかし、消滅会社の株式の1株当たりの価値と存続会社の株式の1株当たりの価値が同じとは限らないので、消滅会社の株主が対価として交付される存続会社の株式数は、消滅会社の株式数と同じとは限らない。その結果、消滅会社の株式の1株に対して存続会社の株式何株を割当てるかという割当ての比率(合併比率)を定めるのが通常である。

旧商法の時は、消滅会社の株主は対価として存続会社の株式を引き受けて、存続会社の株主になった。しかし、2007年(平成19年)5月1日からは、会社法で、「対価は何でもいいですよ」ということになった。これが「対価の柔軟化・自由化」と呼ばれるものである。合併などの対価として消滅会社の株主に引き渡すべきものとしては、現金でも親会社の株式でも、極端なことを言えば外国会社の株式でも、何でもよくなった(浜辺陽一郎著「会社法はこれでいいのか」平凡社新書28P参照)。

◆一口メモ(その6)三角合併とは何か?

「対価の柔軟化」により、存続会社が消滅会社の株主に対して、合併の対価として、存続会社自身の株式ではなく、存続会社の親会社の株式を交付する方法。

以上のことの関連で、特に、外国の親会社が日本で設立した子会社に親会社株を移動すれば、その親会社株を対価として、日本子会社に別の日本法人と合併させることのできる「三角合併」が注目されている。外国企業も、株式・現金の変わりに自社株を使えば、多額の現金を支払うことなしに、日本企業を実質的に完全子会社化することができる、有力な手段が与えられたのである(浜辺陽一郎著「会社法はこれでいいのか」平凡社新書29P参照)。

 

Ⅱ.役員改選と譲渡制限

一取締役の任期(会社法332条)

原則

選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までである。ただし、定款又は株主総会決議によって、その任期を短縮することができる。

◆一口メモ(その5)委員会設置会社とは何か?

取締役会と会計監査人を置く会社は、定款により委員会設置会社になることを選択することができる。委員会設置会社は、1、指名委員会2、監査委員会3、報酬委員会4、一人また数人の執行役を置かなければならない。

例外

1)委員会設置会社を除く非公開会社において、定款によって、任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができる。
2)委員会設置会社の取締役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までである。

二会計参与の任期(会社法334条)

上記一と同じ(取締役の任期と同じ)。

会計参与設置会社が会計参与を置く旨の定款の定めを廃止すると、その廃止の効力発生時に会計参与の任期が満了する。

三監査役の任期(会社法336条)

原則

選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までである。ただし、定款によって、任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を、その退任した監査役の任期の満了すべき時までとすることができる。

監査役1名の会社の場合において、会社法施行後に選任された補欠監査役の任期も、その退任した監査役の任期の満了すべき時までである。

例外

1)非公開会社において、定款によって、任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができる。

参考文献

『法律学講座双書会社法第8版』神田秀樹著(弘文堂)

『商業登記ハンドブック』松井信憲(マツイノブカズ)著(株式会社商事法務)

『新訂増補版会社登記の全実務』田口真一郎・小野目人久・名取克彦・

黒川龍著(株式会社清文社)

『会社法はこれでいいのか』浜辺陽一郎著(平凡社新書)

『新・会社法100問[第2版]』

編著者葉玉匡美著者会社法立案担当者の会(ダイヤモンド社)

『論点解説新・会社法千問の道標』

編著者相澤哲葉玉匡美郡谷大輔(株式会社商事法務)

『詳解新会社法の理論と実務』監修者田邊光政編者関西法律特許事務所成和共同法律事務所(株式会社民事法研究会)

『「会社計算規則」逐条解説』

著者郡谷大輔和久友子小松岳志(税務研究会出版局)

『楽しく使う会社法』著者木俣由美(株式会社自由国民社)

『会社法大要』著者龍田節(タツタミサオ)(株式会社有斐閣